『君たちはどう生きるか』(吉野源三郎)

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「この本、おもろいで」と学生時代に先輩に薦められた本が吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』だった。その先輩は自分が読んで面白いと思った本を即座に紹介してくれる人で、ニーチェの『ツァラトゥストラはかく語りき』や、渋沢栄一の『論語と算盤』は、当時先輩と知り合わなければ自分から読むことはなかったと思う。

 

君たちはどう生きるか』もそんな一冊で、当時先輩に熱心に薦められた。当時は「金はないが時間はある」というザ・学生身分だったので、なじみの古書店で100円程度で古本を購入し、授業の合間に読んでいた。

 

個人的には、「あぶらげ」と呼ばれ、貧しいがゆえにクラスで立場の悪い友人に対してどのような距離を取ればよいかと主人公が思い悩む話(があったはず)がいちばん印象に残っている。この悩みに対する叔父さんの助言ももちろん立派なのだが、それよりも私にとっては戦前の少年も現代の少年と同じ葛藤を抱えていたこと、そしてその葛藤が真正面から小説に取り上げられていることのほうが印象深かった。

 

私はどうやら、「昔の人間も今の人間もどうやらたいして変わらない」と知ると、勇気づけられるところがあるらしい。それは、今生きている私という個人や世界が決して絶対的なものでないことを認識できるからなのかもしれない。