未知との遭遇

思い切って社内プロジェクトの公募に応募してみた。省庁がらみのハードな仕事で、社内でもベンチャー的な部門への異動だ。

正直、今の部門で働いていけば、数年後には昇格できる見込みがあった。マネジメント能力もこの数年でずいぶん鍛えられた。

でも、今のままでいいんだろうか。こんなふうに、だれかの失敗の穴埋めに、残り少ない若い時間をすり減らしていいのか、という気持ちが心の奥底にわだかまっていた。

昔の信頼する上司からは「君もそろそろマネージャーとしての楽しみに気づくと思っていたから少し残念だ」と言われてしまった。たしかに、そのおもしろも感じてきてはいた。

でも、私はまだマネージャーではない。マネジメントは、マネージャーになってからでも十分に学べる。

今、この時期には、自分を大海に繰り出してやらなければもったいない。自分が右も左もわからず、周囲に圧倒されながら仕事ができる年数は限られている。

そう思って、異動を決めた。

時折、私は自分を試すかのように見知らぬ土地へ旅立つことがある。その挑戦が勝ち越しなのか負け越しなのかはよくわからないけれど、たくさん迷ったりくよくよしたりしながらも、ひと回りもふた回りも大きくなってきた実感はある。

だいたい、未知の場面に自分を突っ込んでいかないと、もとが出不精の自分はすぐに引きこもってしまう。本当は冒険に出たいひきこもり、というめんどうな性格だから、ひきこもり成分に打ち勝つために、数年に一度、自分を表舞台に引っ張りあげている。

さて、今回はどんな旅になるのだろう。