『君たちはどう生きるか』(吉野源三郎)

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「この本、おもろいで」と学生時代に先輩に薦められた本が吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』だった。その先輩は自分が読んで面白いと思った本を即座に紹介してくれる人で、ニーチェの『ツァラトゥストラはかく語りき』や、渋沢栄一の『論語と算盤』は、当時先輩と知り合わなければ自分から読むことはなかったと思う。

 

君たちはどう生きるか』もそんな一冊で、当時先輩に熱心に薦められた。当時は「金はないが時間はある」というザ・学生身分だったので、なじみの古書店で100円程度で古本を購入し、授業の合間に読んでいた。

 

個人的には、「あぶらげ」と呼ばれ、貧しいがゆえにクラスで立場の悪い友人に対してどのような距離を取ればよいかと主人公が思い悩む話(があったはず)がいちばん印象に残っている。この悩みに対する叔父さんの助言ももちろん立派なのだが、それよりも私にとっては戦前の少年も現代の少年と同じ葛藤を抱えていたこと、そしてその葛藤が真正面から小説に取り上げられていることのほうが印象深かった。

 

私はどうやら、「昔の人間も今の人間もどうやらたいして変わらない」と知ると、勇気づけられるところがあるらしい。それは、今生きている私という個人や世界が決して絶対的なものでないことを認識できるからなのかもしれない。

Surface Pro 6 を買ってすぐ設定したこと

iPad Pro を買うべきか?Surface を買うべきか?

僕はかなり迷っていました。周りの人がiPad Proを次々に買っていて,ペンを片手にPDFに書き込みをしていたりすると,電子文房具としての完成度の高さにうなっていました。自分がiPhoneを使っているので,なおさらiPadはうらやましい。

しかし,ノートパソコンが手元にないのも不便。「Adobe XD」などの,Windows/Mac OS専用アプリケーションを使いたい気持ちもあり,最終的にはパソコンにもタブレットにもなる Surface Pro 6 を購入しました。

しかし,iPad Proと比べて使いづらいなと思う点も最初はたくさんありました。でも,それは誤解で,設定を変えればよかっただけのことでした。

誤解1:フォントが嫌い

windows10の何が嫌かって,標準フォントが変更できないうえに,妙に縦長のフォントを標準に使っていることです。創英角ポップ体を見ると虫唾が走る性格なので,フォントが汚いと使っていて心が曇ってきてしまいます。

標準フォントを変えるためにフリーソフトを使うのも悪くないけど,もう少し安直な手段はないかしらと思っていたら,「ウェブブラウザのフォントだけ変えれば十分では?」という説に至りました。よく考えたら,標準フォントを見る時間よりもブラウザを見ている時間のほうが圧倒的に長いのです。

早速Chromeでフォントを設定し直して,とても満足しています。

無料で手に入るフォントとしては,「源ノ明朝」「源ノ角ゴシック」が比較的きれいだと思います。以下の特設サイトを経由してダウンロードするのが一番わかりやすいと思います。

誤解2:ペン先がズレる

ペンの初期設定のママだと,ペン先にカーソルが出てきます。しかもその位置が少しズレているように感じられます。iPad Proをさわったことがある人間にとっては気持ち悪い以外なんでもない感覚です。

ただ,ペンの設定を変更すれば,カーソルを消すことができます。

ペンの消しゴム側を1回押して,「ペンと windows Ink の設定」を選択して,「視覚効果を表示する」「カーソルを表示する」をオフにすれば,iPad Pro と同じような感覚でペンを使えます。

 

とりあえずこれだけで十分気持ちが変わるんじゃないかと思います。まだ買ったばかりなので,少しずつ追記していきます。

廃バスでドリップコーヒーをいただく話

The Old Bus・静岡県沼津市

カフェを楽しむ人なら、一見風変わりなお店を押さえておくのも悪くない。

 

久しぶりのサイクリングで静岡の大瀬崎に向かう道すがら、小さな入江にブルーのレトロなバスがひっそり停まっていた。タイヤがパンクしており、すでに廃車になったもののようだが、窓から中をうかがうと、暗がりの車内に吊り電球がぶら下がり、棚やビンなどの調度品が置かれている。

奇妙な廃車をとりあえず写真に収めていたら、白い犬を連れた女性が向かいの建物から現れて、「寄って行かれますか?」と声をかけてくれた。話を聞くと、この廃車バスはカフェ&バーで、彼女はそのオーナーだという。

せっかくなので、と早速バスに足を踏み入れると、錆びついた車体からは想像もできない、モダンな空間が広がっていた。

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内装で目を引くのが、天井に貼り付けられたおびただしい紙片。よく見てみるとそれはどれも名刺だ。真っ白なものから茶色にくすんだ年季の入ったものまで、過去にここを訪れたお客の記録がそのまま室内装飾になっている。

海が真正面に見えるカウンター席を抜けてバスの後部に向かうと、腰を沈められるソファが3脚、ローテーブルを囲んでいる。ソロー『森の生活』をはじめ、何冊かの哲学書旅行記が詰まった本棚があり、静謐な書斎のようだ。

 

森の生活〈上〉ウォールデン (岩波文庫)

森の生活〈上〉ウォールデン (岩波文庫)

 

 

ハンドドリップのコーヒーをいただきながら、ゆっくり目を閉じる。窓からは爽やかな潮風がそよぎ、ゆっくりしたさざ波の音が聞こえる。何とも穏やかな時間だ。

店に置かれた小冊子を読むと、この店は2代目で、もともとは横浜で別のマスターが開いていたらしい。横浜の店をたたまなければならない状況になった時に、今のオーナー夫婦が申し出て廃車バスを引き取り、静岡までレッカーしてきたのだそうだ(詳しくは新聞記事を読むとよくわかる)。

廃バス、くつろぎ空間に 横浜で愛された“バー”、沼津へ|静岡新聞アットエス

海辺の廃車バスで思索に耽溺できる、他には代えがたい居心地の良さを感じられる空間だ。大瀬崎に行く機会があるなら、ぜひ立ち寄りたい。

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▲YOKOHAMA BAY CITY EXPRESS.横浜時代のオーナーがオリエンタル急行をイメージして作ったのだとか。

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▲元の店名「Jack Knife」が残っている。今の店名は「The Old Bus」。

 

なお、開店日時は公式Facebookページから確認できる。要チェックだ。

The Old Bus

 

混雑を避けた鎌倉日帰りルート

今年初めての鎌倉旅行は、ゴールデンウィーク真ん中の5月4日土曜日。「混雑を避ける」をテーマに、今回は観光客が比較的少ないルートを選んでみました。なお、写真はありません、悪しからず。

 

1)ランチ「奥鎌倉 北條」

まずは腹ごしらえから。二階堂近くの「奥鎌倉 北條」に予約を取って向かいました。

奥鎌倉 北條

食べログ 奥鎌倉 北條

11時半に鎌倉駅に降り立ち、バスに乗って「鎌倉宮」の手前の「天神前」で下車。鶴岡八幡宮から少し西に外れたエリアにあります。

庭付きの日本家屋を改装した瀟洒なお店でビーフシチューを注文。和風の店構えに合わせてか、お茶碗に入ったほかほかのご飯に汁物(玉ねぎとレモンのスープ)と2つの小鉢(アカモクの卵とじ、小松菜のお浸し)が付いてきます。

縁側からは気持ちのいい五月の風が吹き、日が差し込む広い庭には地域猫として可愛がられているもっふもふの猫ちゃんが顔を出す、そんな静かな古民家の中でほろほろの牛肉をほおばる喜びは格別です。ゴールデンウィークにもかかわらず席にはまだ余裕があったので、混雑してる季節でもおすすめです。

ごちそうさまをして、近くの天神様にお参りをしてバスで鎌倉駅に戻ります。

 

2)安養院

今日のいちばんのお目当ては、安養院のツツジです。下のリンクではバス移動が推奨されていますが、距離で言えば鎌倉駅から鶴岡八幡宮と同じくらいなので、徒歩で向かいました。

鎌倉市/安養院(浄土宗)(あんよういん)

見上げるほど大きなツツジの木が垣根をなして並んでいるため、遠くからでもショッキングピンクの花があふれんばかりに咲いている様子がよくわかります。今週が最後の見頃といった風情で、本当はあと一週間早く来られたらよかったです。それでも、ちょっと他では拝めない景色でした。

 

3)カフェ「ソラフネ」

実は、安養院に行く前に突然の雷雨に巻き込まれてしまい、いったん雨宿りをしていました。下調べをしていなかったため、急きょ飛び込んだのがここ「ソラフネ」です。

ソラフネ - 鎌倉/カフェ [食べログ]

ここも古民家を改装したところのようで、自然食を売りにしていました。「たんぽぽ茶」を頼んで一服して、雨が止むのを待ちます。

座布団の席と椅子の席の両方があり、広い窓からは梅の木があるちょっとした庭を眺めることができ、ここも落ち着く場所です。

安養院や安国論寺の周辺にはお店があまり多くはないので、選択肢の1つに持っておくと便利かもしれません。

 

4)カフェ「ミルクホール」

今日の最後は、鎌倉に来たら必ず立ち寄る「ミルクホール」です。小町通りの路地裏にあるため、ふだんは人があまりいない、穴場スポットなのですが……

ミルクホール - 鎌倉/カフェ・喫茶(その他) [食べログ]

さすがにゴールデンウィークは混雑していてなんと満席。とはいえ、16時台を狙って行ったおかげで数分と待たずに席が空きました(よかった)。

大正モダンを基調とした薄暗い店内で、唐草模様のカップ・アンド・ソーサーに入ったロシアンティーを一杯。この時間帯に来たことがなかったので知らなかったのですが、17時になると照明が一段落ちて、代わりにキャンドルを机に1つずつ配ってくれるお洒落な演出がありました(このお洒落は平仮名でも片仮名でもなく、漢字で「お洒落」と書きたいところです)。満席なのは予想外でしたが、にぎやかな方がかえって大正時代の大人の社交場といった趣が感じられてこれもまたいとをかしき時間でした。

 

ということで、雨に見舞われてしまったため、安養院に行った以外には観光らしいことを何もしていませんが、ゴールデンウィーク真ん中の鎌倉でも、カフェでゆったりとした時間を過ごすことができました。「北條」のある北西エリアに的を絞って、午後は近辺の報国寺や旧華頂宮邸、浄妙寺を巡ってみても面白いと思います。

ルート選びのご参考にどうぞ。

 

 

 

今年買ってよかったもの(1)

今年のまとめが増えてきたので波に乗っかってみる。

 

パナソニック 脱臭ハンガー

脱臭ハンガー | 電気脱臭機 | Panasonic

 

とても恥ずかしながら、わき汗がにおうタイプの遺伝子型のため、スーツに着いたにおいが気になっていました。衣料品用のフレグランススプレーを使う手もあるのですが、においで誤魔化しているだけで、原因となる染み付いた汗はそのままなのが嫌なんですよね。

この脱臭ハンガーは、空気清浄機と同じ原理でにおい物質(酢酸)を二酸化炭素と水に分解してくれる(らしい)ので、根本からにおい問題を解決してくれます。

原理がどの程度ほんとうなのかはわかりかねますが、実際、においは取れます。

毎日家に帰ってきて、ハンガーにかけてスイッチを入れて放っておけば、朝起きた時には完了している手軽さも「買ってよかった」理由です。

元値が少しだけ張りますが、(クールビズに入る夏場を除いて)毎日使えるものなので、投資対象としては割りが良いのでは?

2年間ママチャリなしで暮らしてみた

別に佐賀や神戸に住んでいるわけではない。坂のない平地に暮らすこと2年間、ママチャリを買わずに生活してみた。

スーパーに行くにも30分ほどかけて歩いていく。何をするにも徒歩、徒歩、徒歩。自宅からいちばん近いスターバックスコーヒーまで40分の道のりをゆっくりと歩く。

自転車に頼らず、自分の足で歩いてみると、街の景色はまた違って見える。季節ごとに移り変わる草木を感じたり、ゆっくり考えごとをしたり。自転車を捨てるだけでこんな穏やかな時間が過ごせるなんて思っていなかった。

 

……なんてことは、ない。

ふつうに自転車を買うべきだ。歩きたいなら特別にその時間を作ったらいい。重たい買い物袋を片手に真夏に真冬に歩く必要性は全くない。ふと遠くにきれいな景色が見えたって、寄り道する体力がごっそり削られている。何より、行動範囲が非常に狭い。ちょっと近くまで行こうかな、と思っても先にめんどくさくなってしまうから気持ちの上でもよろしくない。物理的にも心理的にも行動範囲が狭まっていく2年間だった。なんでもっと早く自転車を買わなかったのか。

日本列島では1960年代以降、急速にママチャリが普及したという。そりゃ普及するわ。みんな、引っ越しをしたらすぐにママチャリを買おうな。

未知との遭遇

思い切って社内プロジェクトの公募に応募してみた。省庁がらみのハードな仕事で、社内でもベンチャー的な部門への異動だ。

正直、今の部門で働いていけば、数年後には昇格できる見込みがあった。マネジメント能力もこの数年でずいぶん鍛えられた。

でも、今のままでいいんだろうか。こんなふうに、だれかの失敗の穴埋めに、残り少ない若い時間をすり減らしていいのか、という気持ちが心の奥底にわだかまっていた。

昔の信頼する上司からは「君もそろそろマネージャーとしての楽しみに気づくと思っていたから少し残念だ」と言われてしまった。たしかに、そのおもしろも感じてきてはいた。

でも、私はまだマネージャーではない。マネジメントは、マネージャーになってからでも十分に学べる。

今、この時期には、自分を大海に繰り出してやらなければもったいない。自分が右も左もわからず、周囲に圧倒されながら仕事ができる年数は限られている。

そう思って、異動を決めた。

時折、私は自分を試すかのように見知らぬ土地へ旅立つことがある。その挑戦が勝ち越しなのか負け越しなのかはよくわからないけれど、たくさん迷ったりくよくよしたりしながらも、ひと回りもふた回りも大きくなってきた実感はある。

だいたい、未知の場面に自分を突っ込んでいかないと、もとが出不精の自分はすぐに引きこもってしまう。本当は冒険に出たいひきこもり、というめんどうな性格だから、ひきこもり成分に打ち勝つために、数年に一度、自分を表舞台に引っ張りあげている。

さて、今回はどんな旅になるのだろう。